この当時野球ファンの間では「巨人擁護の意味不明な話か」と真面目に聞く耳すら持っていなかったんだが、大久保氏本人の論旨はより深い狙いがあった。
彼の話として逸話を拾ってみると
「最初から最後まで全部同じ球種投げるピッチャーいるか〜ァ(語尾上げ)、狙い球絞って最後まで待っていれば”いつか必ず(3打席として見ても少なくても:約15球〜18球)投げる”んだからそれをホームランしちゃえばいんだァ(語尾上げ)」
「打席でさ、あーお願いします外角真っ直ぐ投げてください、こう心の中でお願いすると不思議な事に投げてくれるんだよね〜、狙った球種を投げてくださいとこころの中でお願いするんだよそれをホームランすればいんだァ」
「反対方向(右打者ならライト方向)にあてにいくんじゃなくて、スタンドまでぶち込むんだァ」
彼は打撃理論としては落合派(落合が認めているのかは別問題)で、出塁率や得点圏打率以上に”その打席でホームランを狙っているか”を重視する(落合が中日監督としてそのような野球をしていないのはご存知の通り)、これはロッテ在籍当時落合が三冠王取っていた当時の落合の野球感であり「ホームランは狙って打つもので、ヒットの延長ではない」的発言の延長にあるものなんだろう。
そんな大久保氏が今西武でどんな打撃指導をしているのかと言えば
秋季キャンプからか”フルスイングできる身体作り”を徹底
徹底的なDATA分析で配球を分析、狙い球を事前に絞る
先発予想される投手の最近の状態から狙い球を絞る
先発予想されている投手に癖があれば、打撃投手にその”真似”をさせて打ち込み
打順や状況にほぼ無関係に常に全員ホームラン狙い
■『これがみごとにあたった』
そして大久保氏の現役時代のバッティングを記憶を辿って思い出してみると・・・
カウント球の”変化球”狙い(長打狙いの典型”甘い真っ直ぐ待ち”はしない)
狙い撃ちする時には「ドーンと踏み込んで」外角球をド真中にして長打
大打者落合との違いは
落合が「デッドボール当てられるかもって当たり前だろお前、俺なんか全球逃げる準備して待っている、まー俺に当てられる奴はいないよ(唯一彼が逃げられなかったのは”シュートの盛田(横浜→近鉄)”で、盛田のデッドボールに珍しく激高したのを憶えている)」と、デッドボールの後「やってられないっスよ」と愚痴を言った古田に答えた話に集約されている。
彼は読んで狙う(最も確立が高いのは”投手の決め球”)怖さも十分承知のバッターだった。
(これに近い話を長嶋氏もしている筈)
そんな大久保氏が、ヤクルト高津の投じたシュートで手首を骨折した事がある。
(大久保氏は引退後も”あれは狙われた”と随分根に持っていた)
何故かというと、読みを外す名人だった捕手古田のリードの特徴は「予想もしないときにインコースのストレート(乃至シュート)を配球する」ところで、
相手の読みを完璧に外すものだから、アウトコースと打ちにいっている打者が打席でひっくり返るほど驚く事も珍しくなかった(インコースの”ストライク”でものけぞる打者多数)。
実際投げた高津側から言えば「あれほとんどストライクじゃね」というのが話のオチで、
タレントとしてはともかく、野球解説者としての大久保氏の力量を疑う話としてはヤクルトファンの間では知る人ぞ知るネタのひとつ。
そんな大久保氏は選手としては短命だったので、ベテランや大打者の逃げながら打つ世界に到達する事無く引退。
”野球馬鹿”の域までいっちゃっている野村監督型の”読み”は「インコースに投げられるタイミングまで予測する」ぐらいの”捕手のリード分析”なので(現在楽天1番バッター渡辺直人はインコースならデッドボールを狙い現在ダントツの死球王)、その読みに到達するまで時間もかかるし、誰もが適応性があるとも言えない(山崎武司にはハマっても礒部には合わない)。
現在の大久保打撃コーチの西武が「ほぼ全員打撃においてホームラン増となっている」のに比べて短期的成功率は”大久保氏の方が上”と言ってもいい。
この読みを巡る心理ってものには「その成果をどれぐらいの時制で考えるのか」なる部分が大きく関わってくる。
落合型は
「個人的大打者通年成績+監督就任後の計算できるチーム(時制通年)への”読み”」
(監督としては”計算できる駒”として猛練習を背景に選手を信頼するところがポイント)
野村監督型は
「野球における戦術(各試合)・戦略(年間)として策士としての”読み”」
(これを各人選手レベルにも要求するところがポイント)
デーブ大久保打撃コーチ型は
「対極に立つナベQ監督との関係性が背景にあるので、打撃コーチとして選手各個人の打撃成績ベースにする個人的な一試合・一打席の”読み”」
(打撃というものをコーチとして総得点数で考え、型にはまらずホームラン狙いに徹するところがポイント)
前者2者が監督なので、大久保コーチと比較するのには無理があると思うんだけれど、実はここが最も大きなポイント。
大久保コーチに任されている打撃陣の運用は「相当渡辺監督(ナベQ)に任されちゃっている」打撃に関しては監督並の”戦術的読み”に相当する。
なので、本来長期的な”時制”に関わるところは渡辺監督が大枠を決めていかなくちゃいけないんだけれど(現在のところ難しい顔をせずおおらかなところが評価されていることもあって)、彼はなかなかそこ(長期)に踏み込んでいないのじゃないかと思う。
これは確証無いのだけれど、
大久保氏の現役時代のバッティングを見ているだけに「今の西武はデーブが一杯だわ」に見えるところから”その可能性は高い”と考える(笑
はい、長くなりましたが
「だとすると」
「必ず誰か骨折する」
大久保氏の読みは
「外角球でも”踏み込んでフルスイング”」
「読みと違う球が来ることはあまり考えずに”狙い球を信じて”その思い切りの良さで”見逃さずに一発で仕留める”」
「体型や技術に関わらず強い打球を狙う」
「開き気味でインサイド寄りの甘い球を待つことはほとんどしない(滅多にここに投げるピッチャーもいない)」
「アウトコースよりの変化球を反対方向に長打狙いも多い」
「高めのつり球(ブラッシュボールと同じような意味で配球する事が多い)も手頃の高さなら積極的に(アッパーでも)フルスイング」
■ほとんどが踏み込んで身体からボールに”向かっていく”パターンが多く、見ていくってよりは(高めのように)振りにいく。最も重要な事は打者にとって最も”快感”であるホームランの誘惑を”モチベーション”としている。
これは誰が怪我するよと思った。
【西武】中村が死球受け左ほお骨折
http://www.nikkansports.com/baseball/news/f-bb-tp0-20080511-358724.html
西武中村剛也内野手(24)が5回裏の第3打席で死球を受けて退場。神戸市内の病院でエックス線検査を受け、左ほお骨の骨折が判明した。球団は「今後については明日の様子をみてから」と発表した。
(nikkansports 2008/05/11)
「あたるのはセ・リーグとの交流戦かな」と思っていたけれど、
恐れていた事が起った。
当然これはデーブ大久保氏の読みがいいとか悪いとかじゃなくて、これを防ぐ戦略は渡辺監督がコミットする部分で(死球の時に激怒して抗議とかじゃなく、戦略上ココを考えなくちゃいけない)、現在パ・リーグ独走の気配も出始めている西武が今後どんな”読み”をしていくのかここはスポーツ心理としても注目だ。
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