2007年09月15日

『鶴田浩二』

共同幻想の崩壊過程と言えば、それこそ明治から始まっている(或いは江戸期の飽食の時代「畳の普及」や「養生」って健康ブームの走りがあった頃からか?)のだろうし、その後の「大将デモクラシー・モボモガの時代」には近代的サブカルの登場、そしてこの反動としてファッショの時代である軍国主義第二次世界大戦へと突入する。
今の時代の人にはあまり知られていない事だけれども、『日本の戦後・アプレゲール時代』にはアメリカベトナム帰還兵ほどじゃないが、生き残った軍人に皆が敬意を払ったワケではなかった(それがその後の遺族会などの右傾化や靖国が象徴化されてしまう原因にもなっている)。
ここにそんな象徴的映画スターがいる。
誰あろう鶴田浩二だ、
僕らの世代の鶴田浩二と言えば、脚本:山田太一のNHKTVシリーズ『男たちの旅路』となるが、この『男たちの旅路』の人物設定がそのままそうであったように、彼の”特攻隊崩れ”という話は事実と違っていたけれど(本当は特攻隊の整備兵)、彼がその特攻の渦中で戦後をむかえたのは事実で(三島由紀夫と親しく、野坂昭如的平和感とは水と油で鶴田を似非特攻隊員と批判した野坂と鶴田派映画人との間で段論争が起きたぐらい)、はじかれてしまったアウトサイダー的に彼が「共同幻想の崩壊過程」を横目に見ていたのは間違い無い。
彼は歌謡でも有名だったが(作詞の吉田正にあれこれ注文をつけての作品なので作詞から鶴田が大きく関わっているのは間違い無い作曲でコンビを組んでいる吉田正に「堅いばかりでは流行歌は作れない」と、飲めない吉田を酒に誘ったり鶴田は楽曲の製作段階から鶴田が関わっていた→すんません作詞と作曲間違ってました、よって編集〜)、その代表作が。
『傷だらけの人生』
作詩:藤田まさと 作曲:吉田正(1970年)

「古い奴だとお思いでしょうが、古い奴こそ新しいものを欲しがるもんでございます。
どこに新しいものがございましょう。生まれた土地は荒れ放題、
今の世の中、右も左も真っ暗闇じゃござんせんか。」

何から何まで 真っ暗闇よ
すじの通らぬ ことばかり
右を向いても 左を見ても
ばかと阿呆の からみあい
どこに男の 夢がある

「好いた惚れたと、けだものごっこがまかり通る世の中でございます。
好いた惚れたは、もともと心が決めるもの
こんなことを申し上げる私もやっぱり古い人間でござんしょうかね。」

ひとつの心に 重なる心
それが恋なら それもよし
しょせんこの世は 男と女
意地に裂かれる 恋もあり
夢に消される 意地もある

「なんだかんだとお説教じみたことを申して参りましたが
そういう私も日陰育ちのひねくれ者、お天道様に背中を向けて歩く、
馬鹿な人間でございます。」

真っ平ご免と 大手を振って
歩きたいけど 歩けない
嫌だ嫌です お天道様よ
日陰育ちの 泣きどころ
明るすぎます 俺(おい)らには
http://www.youtube.com/watch?v=wjmyYXuSnDs

今にも通じますね、思いっきり。思うにどんな理由にしろ共同幻想からドロップアウトした世界から見ると、この世界は『右を向いても左を見ても(これ本当は左翼と右翼の安保闘争なんかの意味でしょう)ばかと阿呆のからみあ〜い〜』に”見える”んだと、
世間が本気でバカなんじゃないですよ(笑
外の世界から見ると”そう見える”んです、
これ何故かって言うと、共同幻想的保守もその反動左翼にしてもよって立つ根拠が既に存在していない幻想(伝統や文化は既に戦争等で”一度正当性を失って”単なるノスタルジーでしかない)であるからで、

なので、鶴田はその歌の前の語りで”新しいものを欲しがるもんでございます”となっている。新たなオルタナ(社会構造の論理)を見つけようと自分は悪戦苦闘なりしてやってみたい(歌中では男の夢)が、世間は共同幻想を中心に大騒ぎでそんなスキ間すら無く、”真っ暗闇じゃござんせんか”とそんな歌(笑

これを特攻隊崩れの(彼が亡くなる時には、戦没者慰霊の活動を評価され遺族や戦友からも「特攻隊員の一員」として認められている)鶴田が歌うから様になる。
戦中の共同幻想反動ファッショの渦中で、一度人生の絶望を経験した人間だからこそ「戦争が終われば”終わる”と思っていたが、いざ終わってみても真っ暗闇じゃないか」という台詞が真実味を帯びる。
共同幻想の崩壊過程にはいろんな現象が起きるのだけれど、「どこに男の夢がある」と歌っていいのは”歌”だからで、現実世界じゃそういうワケにもいかんでしょう。

と、こんな文章を書く最中に『安部ちゃん職場放棄退陣→朝青龍化』事件(もうあれは事件レべルでしょう)が起きた。
彼の夢見た「美しい国」は明らかにノスタルジーでそこに正当性(新しいもんでなくちゃいけない)を見つけることはできなかった。その美しい国への気持ちで某国の首相が思いつめられても「そんな、真っ暗闇じゃござんせんか」と、
小沢一郎がそんな「傷だらけの人生」をよく歌うらしい(笑
posted by kagewari at 01:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 精神分析時事放談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


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