非常に面白い部分は(興味が無いとか嫌いとかの意味では無いが《個々人の音楽の趣味には入っている》)BAND-MAIDメンバーの音楽活動にハードロックのルーツが無いことだ。
表向きの(まあ適当な)設定は「お客さんの求めるロックを音楽メイドが奏でます」とかになってるワケだが、言うまでも無く現在の『BAND-MAID』はロック界でも異質の個性派であり、
インスト曲にあるように、その迫力も異質なレベルで、ミュージシャンとして楽器隊が全力出しているのは間違いない。
●さてテーマは「その活動ルーツが無いのに、瓢箪から駒で個性化した」という部分だ
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このルートを現代の「最低でも歩留まり以上《あえて非婚・晩婚世代とでも言おうか》」の生き様に重ねてみたい。
■ま〜小学生にでもよくわかる「個性化の論理矛盾」
・最初から個性があったら、個性化する必要が無い
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最初にあるのは単なる個体差であって(好みの違いや興味の違い)
それがどう形になるのかってのが”個性化”なので(よくさ、ガキのスポーツお教室で”何が好きなのかわからないからかたっぱしから色んな教室行ってみる”ってあるじゃん)、
粘土細工や彫刻で考えりゃいいかな、
(作者アイデアは単なる個体差で、場合によっちゃ周囲の感想や助言なども織り交ぜつつ「どうすりゃいいのか試行錯誤」するルートを経て”個性的作品になる”)
■BAND-MAIDの場合、いくつかの余計なものが削ぎ落されていく過程がある
重要メンバーということで基礎的構造作曲担当であるKANAMI氏の場合で進めようと思う。彼女にロック系のモチーフが(軽音楽部などの洋楽カバー含め)知見の中にあったとは言え「女子的メロウな楽曲やるもんかな」みたいな(”同調圧力”ではなくて”既成概念”や”予定調和”かな)流れでバンド活動してたところ(御多分にもれず鳴かず飛ばず)、
プロデューサーであるMIKU氏がKANAMI氏の「何のギター弾いてみた(ニコ動と言われている)を聴いたのか」知らないのだが、ギター弾ける子を発見したのであり(既にこの時メイドコスプレでロックでもの企画はあった)、MIKU氏が個性を見出したといえる(ドキュメンタリーによると楽器としてギターを選んだのは”カッコいいから”であり当時のバンドの方向性に疑問もあったのかもしれない)。
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この話が典型なので、ルートを分析してみよう。
どういう音楽をやると自分の個性がMAXに発揮されるのか(そもそも作曲する前に答えがわかってりゃこの世に音楽家などおらん)試行錯誤が続く中、気分転換なのか個人で”ギターを弾いてみた”をネットにアップした事がその後の展開に繋がる。気分転換でもあるのだろうから、素性に近いノリで行ったものだろう。
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これを聴いたMIKU氏が「ロックの娘」と思ったのかはワカラナイが、
流れの中で女子的メロウな活動をしていたKANAMI氏を聴いたのでは無いとこが鍵。
(そのバンド演奏だけを聴いていたらKANAMI氏に声をかけることはなかったかもしれない)
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ひょんなことから、「ハードロックやろうと思って」の話に乗ることになる。
(バンド結成当時KANAMI氏の作曲は事務所にボツにされ続け、教育係じゃないけどプロの作曲家により楽曲が提供される。)
BAND-MAIDがブレイクしたのは言わずと知れた”Thrill”だが、これはKANAMI氏作曲では無い。
(”Thrill”の成功が無かった場合、”方向性の違い《迷い》”からバンドは解散しただろうとも言われている)
「こうやれとは言わないが、やってみるならこっちでしょ」という指導でもあったんだが、
これは女子的メロウな方向性に(そら単なる”既成概念”でほんとに面白いと思ってる?)、「音楽に性別とか関係あるか?」と教育係担当が(阿久津健太郎氏)投げかけたものではないだろうか(当然ここには男子マチズモ音楽としての既存ハードロック批判も被る)、
●ここからガツンとチャンネルが切り替わる(以降全ての曲が成功したワケではないが)
また、更に試行錯誤する中で
「(カオスと表現するものもいるが厳密に言えば違う)全ての楽器演奏がソロパート的に展開する中で、ここに歌唱すら楽器の一部として重ねる(ロックというよりJAZZに近い:ヴォーカルはJAZZで言えばピアノ担当か)」(極論すると単純にリズムを担当しているのはギターの弾けなかったMIKU氏だけ《ピアノで言えば左手も和音を弾くのでは無く、右手演奏とハマる”違う旋律”を右手と変わらない自由さで弾いてるような形》←ここを俺はJAZZのマイルスバンドに似ていると感じてるんだよ)謎の音楽構造を特徴とするようになった(しかも非常にハードで高速)。
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これができたのは、KANAMI氏の活動にベタなハードロックの”ルーツが無い”からではないか?
来日以降日本人みたいなことなってる、元『メガデス』ギタリストのマーティ・フリードマン氏が「ロックやってきた人の性で”ついうっかり”慣れたコード進行使っちゃうものだよね」と証言するように(これJAZZにおけるマイルスが嫌った”うっかりマンネリコード進行展開”と同じ気がする)、ロックのルーツがあるミュージシャンほど「いつか聴いた風景」がどうしても出てしまう部分があるのかもしれない。
※勿論BAND-MAIDにおけるロックを学ぼう段階では、「ナントカ風」などパロディ的に”いかにもそれっぽいリフから始まる”楽曲も複数存在する←後にこれを自ら解体していくのだが、
■(何から何まで自由だとかうまくいってるとかでは無く)
何というか「行きがかり上、個性化がどんどん拡大していく」のだよ、
そして、その方向性が「(本音かどうか確定する前の)なんとわなしの予定調和や既成概念の流れを否定する方向」であったこと(”Thrill”前後の師匠作曲家とのやりとりには「精神分析」的な要素もあったのではないかと思う)。
気が付いた時には、「”当初考えもしていなかった”個性化が止まらない状況」にある。
【大事なポイントはここだ→”当初考えもしていなかった”個性化】
お世辞抜きに『BAND-MAID』の現在地は新しいロックの可能性すら示す位置にいる。
※確か阿久津健太郎氏繋がりだったと思うが、彼の紹介でデビッドボウイやTレックスのプロデューサーだったトニー・ビスコンティがプロデュースした楽曲がある(The Dragon Cries)。この時デモテープをもらったトニーは(ダメ出しでは無いが)「なんでこんなめんどくさい演奏になってんだ」など言及するが、そのまま作詞や録音関係や主としてヴォーカルパートを担当(別にヒットしたとかないけど)。
この時違う意味でKANAMI氏は自信をつけ(どう考えたのかは知らん)
恩返しでは無いけれど、NY公演において”The Dragon Cries”を披露し、
(トニーは所蔵のヴィンテージギターをバンドに贈った《あれ持ってきただけだっけ?》)
観にきたトニーが「とてもいいじゃないか」と喜んでいた画像が残っている。
この作業は「確信犯的部分との接触」ではなかろうか、
いずれにしても、KANAMI氏は(どういう内容か知らないが)自信をつけた。
(その答えが”Manners”だろう、)
ある意味ロックそのものだけどさ、
「個性化は、流れ流れて(転がる石のように)展開・拡大していくのだよ」
JAZZ界におけるマイルスの”聴いたようなコードで濁すな”ってのも(なんせJAZZは即興演奏だから余計に)「それじゃ何も出てこないだろ《お前である必要が無い》」という意味なのだと勝手に思っている。
■「好きな事がなんでもできて、思ったようになんでも上手く行ってる」なんて話は、
ま〜個性化という部分で言えば、「ロクなもんじゃない」ってことだ。
(マイルス的に言えば、「せいぜい器用にダンスホールの伴奏でもやってろ《それの何が面白いのかさっぱりワカラナイが》」って話《マイルスバンドで鍛えらえた各メンバー達は後のモダンジャス界を担っていく》→その後のJAZZ界ってのは”ダンスホール伴奏曲『共同幻想』崩壊「限界効用」の壁”みたいなんに突き当たって挫折の道に転じていくのだが、、、解体するものが無くなってフリーJAZZのカオスに突き当たり何やってるのかわからなくなる《マイルスの死後JAZZは終わった的な側面もある》→「限界効用」に気が付いてスタンダード路線に回帰してみたりね、、、でもそれじゃ懐メロになっちまうんだよな、、《個性を開放するための”予定調和『共同幻想』=コード進行”解体による自由な空間の幅を発見することができなかった》、、、言えばフリーJAZZの失敗は左翼リベラルみたいなものか、)
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