(仰々しいものでも無いので「『自営業』の雑感」ぐらいの意味で読んでくれ、、)
原作者の諌山氏も海外の反響動画やらネット世論など見つつ参考にしてる部分もあったということなので(いろいろ解釈や論議があること楽しんでいらっしゃると)、諌山氏も何からなにまで合理的に設定を詰めていると思いませんが、彼が勘を含めてどういうイメージで作品書いていたのかって背景を考えてみようと思う。
そのまんまですが、『進撃の巨人』関心無い方スルーでお願いします。
また、最終話までネタバレ含む話となっておりますので行間空けておきますからネタバレNGの方もご退場ください。
●前述触れてますが、原作者も細部を完璧に詰めているものではないと思いますから(そもそも時間とは何かって件で結論は出ていないし、劇中死者も幽霊的に登場しますから)、
推論は本編と必ずしも全て一致しません、本編と矛盾する要素もありますが合理的に説明がつくことを優先してます(全体の流れとは矛盾してなければOKとする判断)。
■原作の諌山氏はかの有名なエルヴィンスミスの突撃前演説にあるように(「人生に意味など無い」から始まるあの演説は、個人の実存に社会参加で普遍的意味を持たせようと考えたサルトルの思想そのまんまだったりする)、サルトルの実存主義哲学も御存知で、本作がナチスのユダヤ人マダガスカル移送計画なども着想に含まれるなど裏歴史など含め広範な知識を持っている方だと思います。
今回は「未来の記憶を見る能力」が鍵となりますので、
近年の物理学や量子論における「時間とは何か」のトピックなども当然耳に入っていただろうと思います。彼が「タイムマシンのパラドックス」をどう考えていたのか含めての考察です。
本編の中でも詳細が説明されることのなかったいくつかのポイントを考えてみます。
1)フリッツ王家の『不戦の契り』は何か
これ思うに地ならし巨人の戦力がそろった時にユミルが(2千年後の君にメッセージ送れるぐらいだから始祖ユミルは9つの巨人全ての力を使える)「ついに神罰の時が来たと地ならしの未来を見せた」(この段階では初代エルディア王の命令が有効)。
説明の必要無いけど、『不戦の契り』のモチーフは「憲法9条」
敗戦に至る悲劇が原子爆弾であったことを思えば、その”風景”が重なってるでしょう。
恐れおののいた初代フリッツ王はタイバー家(戦鎚の巨人)と結託し「自ら敗戦宣言と同時に核抑止力みたいなメッセージを残し引き籠った」、
初代フリッツ王にも地ならしの未来を選択する自由はあったが、彼は民族自死(民族自決の反対)の道を選択する。
2)自由と言ってるエレンは(未来が変わらないのに)何を選択したのか
未来が変わらないのでは無い、
フリッツ王の選択により未来は変わり、エレンによる地ならしの未来の世界線に分岐した。
エレンがこれを拒否して逃げれば、同じようにまた他の継承者の手に委ねられる。
大事なポイントは「時空を超えた存在のユミルにはその”確定したひとつの未来”が見えていることで」、その選択だけは未確定要素無く”確実に実行可能な(ひとつの確定された世界線)未来だ”ってことです。
逃げれば、新たな世界線の分岐(パラレルワールド)が生まれるがそこにエルディア人の未来があるのかエレンにはわからない。エレンが道で「エルディア人の未来を運任せの将来に託すつもりは無い」と発言していることからも、エレンにも他の可能性があることがわかっていたが、それを他人任せにすることは(エレンが逃げればチベットのダライ・ラマのようにどこの誰ともわからない赤子継承になってしまう)、エレンにはできなかった。エレンの選択は「”民族自決”を俺がやるしかない」みたいなものか。
3)「2千年後の君へ」のタイトルの意味
一義的にはユミルにとって(エレンに説得されるまで)初代エルディア王の命令は有効であり、
「地ならししてくれる人材」探していたのは事実だと思う。
この時、その人材には彼を愛するアッカーマンのミカサがいたことから物語は始まる。
(ユミルもそのミカサを見たのでしょう)
ユミルには(ハルキゲニア風の不死の生物の寄生)永久に巨人を作り続ける奴隷から”何かの結末”を望んでいたと思われる(子孫に継承され続けることを好ましく思っていなかったが、奴隷ユミルには自由の価値はわかっいない)。それは場合によると”死”、
ハルキゲニア諸共死ぬためにはユミルに未練が残っているといけない(ライナーがところどころで証言しているように生きたいという思いが強いほど蘇生力は高くなる)、ユミルには言語化できない”何かの結末”が必要だった。
(ひょっとすると、初代エルディア王から自死の命令があれば死ねたのだろうか?)
更にハルキゲニア共々巨人を殺せるのが本来アッカーマンだけだとした場合(ユミルの影響が及ばない巨人の力を持つもの)、奴隷であり自由意志の無いユミルは、何が起きるのか強い興味を持った(ユミルにもアッカーマンが何をするのかはワカラナイ)。
4)始祖ユミルは何故ミカサがエレンを止めにくることによって成仏したのか
舌を抜かれ言語を持たない奴隷ユミルが何を思っていたのかはワカラナイ。
ただユミルの死ねなかった未練とは「自由や愛とは何かワカラナイままでいたこと」であり(巨人継承者の能力”強い意志があると再生する”に被ってると思う、生存の強い意志は無いが”わからないことや未練”があったため、道に取り残された)、
エレンを通し自分も当事者になることで”何かに満足できて成仏できた”(言語化できないので何かは不明)。ちなみに道にエルディア人死者達が多数溜まっているのは、巨人因子を持つユミルの子孫であることから(ブラックホールみたいに)吸い込まれ全員溜まっていたってことかと思う(ユミルの道が消滅するまで全員成仏できない)。
5)話の発端のハルキゲニア風生物の設定を考察してみる
現在の地球上にも不死の生物は存在します、
微生物だったか、単細胞生物だったかで「自分の遺伝子を完コピで自分の身体から分身を作り続ける」というもので、そこに化石で発見された古生物のハルキゲニアを「最初の脊椎動物」みたいなイメージで「その生物が不死だったら?」という設定。
巨人のモチーフは聖書や古代文明の伝説などだと思いますが、古生物=恐竜時代(どうしてこの時代は地球に巨大生物があったのか的な部分も兼ね備え)ってことかしら(転じて古生物だから巨大化因子を持つ的な)。
最後に巨人がこの世から消滅するのも、恐竜時代の終焉みたいなイメージかと。
劇中のハルキゲニア風生物もエルディア王が最初のトンデモ継承をしない限り一代で終わっていた(《恐竜同士が食うか食われるかの時代は終わってるので》この時代には本来繁栄できない生物)。
「巨大生物の時代」が”何らかの能力だったら”というアイデアかしらね。
巨大樹の森があるように(特定の木にはハルキゲニアの何かが影響している)
物語が終わった後もその能力が地球上から消滅したのではない。
(ここは必ずしもではないけれど、条約で核兵器を廃止してもウランは地下にあるんだからね。←将来のことや自然界の全てなんてのは誰にもワカランってことかな)
寄生生物として描かれることは、現代の感染症にも似た部分もあったと思う(進撃の場合”民族主義と風土病的”な)
<ここまでを、踏まえて>
『進撃の巨人』の面白さ(特に世界的にヒットした部分)
偶像檄のように思えて、これ社会の在り方がテーマでもあるので(『共同幻想』社会なんてのは基本残酷な世界だ)、どこの国の人にも実感のあるテーマだし、シミュレーション仮説や量子論なんかで時々でてくる「世界は誰かの脳内だけにある夢かもしれない」っつーとこで言えば、
「エルディア人の世界は『始祖ユミルの悪夢』だった」←この辺もナンボ個人主義者が(言っとくけど『単独者』論は個人主義とは違うからな)リベラリズムとやらで切り離そうとしても連綿と続く何か(民族でもなんでもいいけれど)、例えば民族浄化の虐殺を繰り返しても終わるようなものではない。
個人であることと社会とどう向き合うのかってのは同義であって(社会あっての個人、個人あっての社会)、
●各国の『共同幻想』崩壊レベルと関係なしに誰もが投影可能な物語設定だったのかなと
一番ダークなところは、ヒューマニズムやその時の政治的英断などを全く信じずに、
『共同幻想』社会なんてのは基本残酷な世界だと言い切ってるとこじゃないだろうか。
だからこそ、当事者が強くこれに関わっていかないと(この辺もサルトル関係してるのかわからないけど)、自らは何も選択できないまま「世界はいつでもトンデモ無い事になります」よと。
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