俗に言う”ファンソング”とは違うものというかBAND-MAIDはそれでシングルカットすることもありますから、バンドにとってこのファンソングは故にBAND-MAIDの曲なんですよ(彼女達の実存ですから)。
本当に得難い個性で(ベタに言えば”いい人で”、女性差別史観上等で言えば”実に女性らしい”)構造としては売れるとか新しいファンを獲得する商業性はありません(そんなこと別にいいじゃんということなんでしょう)、
●この曲は昨年の全米ツアー中(専用バスでのロードだったんですが)、KANAMI氏がまずサビだけ思い付き、SAIKI氏に「どうかな」と言ったところから始まるのですが、書けば書いたでそのままライブにきてくれた米国ファンに向けての”アリガトウ”でしかないんですが(初公開は日本凱旋トウキョウガーデンシアター)、「いいんじゃない」と答える”意味”ですよ。
しかもスローバラードなので(バラードのつもりで何度作ってもハードロックに聴こえると言われていたんですが)、所謂BAND-MAIDをまだあまりよく知らないハードロックやメタルのファンにはリーチしません(でもいいやって)。
■曲の構成は(素朴なカントリーも意識したやわらかい曲に聴こえますがトンデモナイ)実に複雑且つ実験的です(個人的にはプログレッシブでもいいと思う)
ここんとこ何曲か続けている、イントロ無しの歌い出しに符合する「今回は半拍だけ遅れ歌い出し」構造であるが故に、AパートBパートの境目は”無く”(永劫回忌感出しつつの)、それを示唆するように強烈な(とてもタフな)ベースラインが続きます(今回MISA氏はピックを使用せず意識的つまびいてます)。
明らかに、アコースティク実験配信ライブやらを繰り返したことによって得た構成と演奏法の組み合わせであり(都度バージョンアップしていくこのバンドの姿そのまま)、
一番驚いたのが「ハモってるのか、ユニゾンなのか、ささやいているのかワカラナイ」フランクに即興で合わせているかのような(意識して息遣いなども録音されている)MIKU氏のコーラスです。
このアイデアは普通じゃないわ、
MVの構成としても、スタジオ録音のバンド演奏に米国のCA州かTX州の砂漠を歩くMIKU氏がソロでハミングしているのを被せているイメージなのかも知れません(多分それは米国ツアー中のKANAMI氏の作曲中の様子でもあるのでしょう)。
KANAMI氏のギターソロは「狼の遠吠え」のような表現であり、
(米ツアーならではの、ロンサムカウボーイとでも申しましょうか)
彼女のソロパート作曲は往々にして”言葉にならない”ヴォーカルで表現できない(まあエモーショナルな)部分を埋めるための作業であり(従来曲のリフの解釈も他いかにもロックバンドのそれとは違う)、傑出したものがあります。
BAND-MAID / Memorable (Official Music Video)
https://youtu.be/DQX8BTTsHHU
■音楽と心理学ってことで言えば
音楽はサブカル・オルタナ広義展開苦手な人にも得意な人にも「こうじゃない?」ってそれを助けてくれるものですが(ライブの帰りは”大賢者モード”というか抜け殻になれますよって)、見方変えれば”救済”(「別にいいじゃない」ってことですよ)。
勿論その始まりは教会音楽やら(イェニチェリ)トルコ軍楽隊まで、『共同幻想』マーチとも言えるものですが、ロックのそれは”個人の実存に向けて”というアンチテーゼ(カウンターカルチャー)になります。
時に神であるBABYMETALは『共同幻想』的に見えますが(一度に数万人のリビドーを開放させる)、BABYMETALも純然たるロックであり「こんなとこに集まったバカ共を」ってなカテゴリになるのね。集合性の高さから疑似的権威性まで派生させるけど、俗に言うカワイイお嬢さんなので権威然としないのですよ(モチーフが武装せず旗だけ持って突撃したジャンヌダルクだから)。
”権威じゃないから大人しく聴いてなくてもいい→むしろ騒げ”
※だから党大会だったか大統領選で曲使われてブルース・スプリングスティーン怒ったのさ(そら怒るよ)
ジャンル分けはしたくないけれども、言えばカレッジロックになるBAND-MAIDは(BABYMETALが祭りに近いものなら”ちょっといい感じの角の飲み屋”みたいなもんで)より慈悲深いってのかな。
だから、老いた白人ロッカーがポロポロ泣くんだよね(あー俺にも歌ってくれるのかと《差別的意味はネーぞ”白人ロッカー”ってのがひとつの記号だってのをワカレ》→リアクションでも滅多に語らないのがトレードマークの”イージーライダー”もスゲー語るんだよ)。
得難いバンド、得難い個性ですよホント。
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