2018年12月20日

所得と実存の無関係論(経済学から考える)

代表格はニューヨーク・タイムズのコラム二ストで経済学者(コーネル大学ジョンソンスクール経済学教授)のロバート・H・フランク(著書に「成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学」など)あたりになると思うが、
この人、左派リベラルのNYタイムズにコラム書いているぐらいだから経済学的にはリベラル系かとおもわれがちだけれど、彼の説く累進課税(累進消費税)は右派マネタリストでありノーベル経済学受賞のシカゴ学派フリードマンからも賛同得ていたり、そのアイデアがリバタリアン系シンクタンクで研究されるなど(池田信夫氏の書評から)、経済学的にフランクの説が左派リベラルを意味しているって話でも無い。

■そもそも右派マネタリストであるフリードマンの恒常所得仮説(言うなら所得増と消費増の関連タイムラグやら一時的所得増は預金に回ってしまうなどの仮説)によるケインズ批判は(仮に財政出動と公共事業などの所得分配策が政策的に恒常的に行われれば公共セクターそのものが消費者となり云々って話にもなってしまうので)、決定的に決裂しているって話では無いのだから、
いかにマネーを消費市場に供給し”回すのか”、その手法や見方の角度に違いがあるだけだろうと思っていたりする。


<そういうめんどくさい話はともかくに>
フランクが論証したのは(ってかコラムの延長みたいなものだが)「所謂社会的に成功している高所得者を漏れなく調べても、その結論は(才能も努力も一要素に過ぎず)圧倒的に”運が良かっただけ”」というもので、故に何らかの累進性を持った税制で高額所得者から低所得者へ所得移転の必要性を説くものです(ある意味その手法はともかく前述の右派マネタリストの重鎮であるフリードマンもそこに賛同していたことが重要)。

●市場原理の「パレート最適」でお馴染みの
ヴィルフレド・パレート(イタリアの社会学者・経済学者)に「パレートの法則」ってのがある。
ざっくばらんに言えば社会や企業において主として全体の利益をもたらしているのは”その2割”に過ぎず(よって富の不均衡も自明で起きる)、更に働きアリの法則と同様に「その有能な2割の階層を間引くと、残った8割の中から新たな2割の稼ぎ頭が登場する」というもの。
「パレートの法則」にはマーケティング側から見た発想もあって(流行をリードするのは2割の階層なので)主導する2割の顧客だけをターゲットに商品開発なりサービスの向上を行うと最大効率で利益が上昇するという話さ。
 ↑
これってある意味、前述フランク教授の「成功者は単に運が良かっただけ」という(選択的階層:セレブ)成功者の被選択性ってのは蓋然ではなくって偶然ってか単なる抽選みたいなものだって背景を証明する。
(つか経済学者のフランクがパレートの法則意識せず論文書くとかあり得ない。)


■■■さてここで心理学がテーマにすべきはだね■■■
『共同幻想』論で言うところの「共同幻想常識認知リミッター」の話。
階級制ヒエラルキー構造で形成される『共同幻想』の集団は軍隊と同様に、上位階級がヘッドクオーターとして指揮命令を行うのだから、下士官以降は自発性や能動的思考を意図的に抑圧し極論すれば(情報の共有によって間接的に)前頭葉の一部を共有化する。
簡単に言えば従うのが仕事なワケで、勝手に独創的発想を”しない”事がルールとなる。
これによって自我の実存は希薄になってしまうだけれど、交換条件として(権威の裏付けのある)所属集団の属性名称(課長だとか係長とか同期とか跡取りとか正妻とか若旦那など)、その名称をアイデンティティーとすることで実存する(よって氏名では無く属性名称で呼ばれても”自分だと思って振り返る”ようになる「課長〜っ」)。

日本的経営で言えば、2割の稼ぎ頭となるヘッドクオーターは「年功序列で便宜的に抽選しても大勢に影響は無い(極論すると”誰でもいい”)。」

確かに上記の日本的経営は市場原理すら機能しておらず、あまりにもいい加減であるとww、欧米辺りからは「ちょっとぐらいは(2割の抽選に)競争原理を導入すべきじゃないのか」みたいな論議があるのは事実だが、
まーそこも能力的というよりも(所詮全員が人類ヒト科なのだからそう大きな違いは無い)、ヘッドクオーターに当選した当事者の覚悟(自己責任)の違いってのが大きいかなと。

一神教社会である欧米の場合は(仮想的個人主義でもあるため)、ヘッドクオーター抽選物語も一部が宗教的な正統性みたいなめんどくさい話が関係するので(選ばれた神話の演出効果というか)、一概にそれをどうこうって話でもないと思うが、

ともあれ、ヘッドクオーターとなった瞬間からこれまで抑圧してきた「共同幻想常識認知リミッター」の一部を解除し、指揮命令階層として自意識の一部を覚醒、以前よりちょっとだけ『単独者』っぽくなることが求められる(彼ら的にはセレブっぽく→貴族階級指導層っぽくみたいなイメージ)。



●逆説的に言うと?
■最初から『自意識』リミッター無しで全開放状態にある『単独者』の場合
(『共同幻想』論に置き換えればリミッターの状態は”最初から限定解除の社長”と同じだから)
 ↓
全員が2割の被抽選者”以上”の実存を既に獲得しているので、
(それこそ『共同幻想』物語における抽選されていくエンタメ物語とか無関係)
自分の所得がどうこう、仕事の業績がどうこう、社会的地位がどうこうに「自らの実存は全く関係が無い」(所得や業績や地位に関心が無い→勿論「承認欲求」なぞ発生しようが無い)。
そりゃ何かがちょっと便利になるぐらいはあるかも知れないがその程度の差異でしか無い。
 ↓
但し、こういう輩は組織論としての効率性が著しく悪い(誰の命令もきかずに好き勝手なのだから)
活躍の場は「平場の市場外取引って事になり」
 ↓
フリーエコノミー経済の場合は、(組織化されていないので)2割にも至らず”よくて1%とかそれ以下”の(運による抽選)アイデアが知らない間に全体の生産に関わる重要性を発揮してみたいな構造になるワケさ(ノーリミッター自意識全開100%のアイデアなので『共同幻想』市場のそれを上回る)、←99%のアホみたいな存在も勿論のこと”必要条件”である。
※そして1%の階層は便宜的に(適当に)入れ替わっていく←しか1%とかそれ以下の当事者の人も「我関せず」のまま。
(この入れ替わりに法則性は無くアバウト・適当←ある意味AIが本当に登場するのであれば相性のいい構造だと思う。)


フリーエコノミー経済はカオスにも見えるけれど、ネットワークやクラウドやDATAベースにより『共同幻想』組織構造より高い生産性を発現する(”かもしんない”)。←みたいな話
実際フリーソフトや無料アプリなんぞの世界だと既にそれ日常だし
(フリーエコノミーに関しては有意な論文が経済学会から出ていないからまだまだ推定だけれど)

インセンティブの仕組みはそれまでの貨幣市場経済と全く別物になっていく
※いつか書かないといかんのだが、動機形成論的に『興奮』の果実をどこで獲得するかって時間軸を変えると『自意識』の関わり方や自我の振る舞いは全く別物になるから(プロセスとして”感情に呼応してGO”に対し”面白いかもでGO”は全く違う行為だからね)。



<近々ケインズの以前の原稿も交えて「働け常識のインチキ」みたいなのもやります>






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