2006年07月12日

北朝鮮問題を考える

ザクッと心理的なことを考えれば金一族をめぐる家庭環境はお世辞にもマトモではない。心理学的にも、その後先進国の核家族にその現象が見られるようになる『葛藤や脅迫(強迫)構造』は、元々が特権階級における特異な現象だった。
強いエディプスコンプレックスと対象性を持つ反動形成を原因とする『覇権欲求』や、極論『世界征服願望』。
この辺が伊達に専制君主としての権限を持つと洒落では済まされなくなる、
元来権威の外部化に成功していた文明では(ナチュボーンの政教分離)、文化としての宗教的な理に王が従う形になるので、王家ですら強固な共同幻想に保守されていて、精神的な強迫構造が発生する頻度はそうそう高くない。
文化的に特権階級意識が強い中世のヨーロッパでは、政教分離(教会は独自に強大な権力を持っていたので)があるにせよ、問題のある貴族によって紛争が絶えないのだけれども、当時は国家の概念も今ほどではないので、「○○家と○○家の戦い」みたいなもので当時の兵士はそれぞれの王家に雇われた傭兵なので、戦は長期化したけれども国家VS国家の構造ではない。

んなもんだから、ヨーロッパにとって第一次世界大戦は衝撃的で、欧州の宗教革命以降国家権力なるものが一義的な権威となった結果教会の権力を根拠にする政教分離は形骸化した(宗教の権威性が失墜した)とも言える。
ある意味国家権力は、宗教的権威をも内包しここに「独裁者」が登場すると=「強迫構造を持つ人物」を意味していると言ってもいい。
※そもそも独裁国家は、その独裁者が自分の希望で政変を起こして発生するもので、自然発生的な独裁国家は存在しない
第二次世界大戦の日本の環境を見るととてもわかりやすい、
西欧列強と対峙するために、国家権力の権威性幻想を「日本は意識的に演出した」
これ心理学的な実験に近い。
結果何が起きたのかと言えば、国家構造における反動形成を助長する構造ができあがってしまい、脅迫的な欲求を国家の覇権主義が吸い上げた。
第二次世界大戦は、勝者と敗者を分ける戦争で、この覇権主義的な国家は勝者においてさらに拡大した。「アメリカとソビエト」の登場、皮肉な事にこの両者は「核兵器による抑止」によって、以降直接対決する事は不可能になり、経済的な拡張を争うしかなくなる。当然これでは欲求不満に繋がり、アメリカとソビエトはガス抜きのために代理戦争や地域紛争に介入する、
この冒険主義は、ベトナム戦争に象徴される挫折によって双方によって終焉を迎え、ソビエトは経済的覇権の敗北を原因に崩壊しロシアに先祖がえりした。(覇権主義のダメ出しが足りなかったロシアはチェチェン紛争によってダメを出した)

現在アメリカは、金融や市場原理というようなもので覇権を握っている状態で、反動形成を実現してしまった状態にある。
神経症特有の不安から、テロリズム等による攻撃を恐れ「本気で正当防衛の前倒し」として軍事力を行使する国になった、
あまり重要視されていないけれども、アメリカはクリントン政権時に軍事的な欲求を合理化する方法を模索している。
この時アメリカは国連に賭けた、
本気で国連の要請で、内戦に苦しむアフリカの平和維持に軍事力を使うんだけれども、ここで大失敗する(ソマリア「ブラックホーク・ダウン」)。
現実問題世界大戦規模の戦闘行為を行う動機形成はアメリカには無いし(経済的な覇権という世界がかなりの反動形成を吸収している)、それに堪える動機は世界的にも無い。イラクで他国の援助を必要としていたのはマジな話で(第二次世界大戦直後なら戦闘行為に干渉される事自体拒否しただろう)、現在のアメリカを評すとするなら「攻撃はしたいが戦争は御免だ」という状況にある。

国家の権威が「デフレ」によって崩壊するのは、上記の構造による。
デフレ後の本格的な先進国には国家が反動形成を吸収するような構造を持たないので、精神的な問題は各家庭の範囲にスケールダウンする。
ここいら辺をわかりやすくすると、権威が外部化され文化として固有の伝統を持っていたり、国家が反動形成を吸収する構造があると、権威は見かけ上普遍的(幻想)になり各家庭における権威性はあまりにも矮小なので、何か不安感があったとしてもこれを隠蔽(社会的地位や所得なので隠しようが無い)しくいし「家庭」そのもに対する親の不安も少ない(家庭の雛型がはっきりしている)傾向を持つんだけれども、これが文明化の結果によってそのメッキが剥がれてくると(そもそもが幻想なので)「スケールダウンした家庭内問題」となる。これが先進国特有の心理的な問題の背景だといっていい、ここからわかることは「情報公開と透明性」こそが切り札であるのがわかる。
話は逸れるが、デフレ後の日本は所得の順列ですら社会的地位を意味しなくなっている(偶然就職先が倒産すれば元エリートでも再就職は難しく、貧乏でも知識階層だって事も珍しくない状態だから)ので、社会の風通しはかなり良くなった。現在起きているのは「過去の権威性の残滓」のようなもので、これは社会現象としてのノスタルジーと考えてもいい。

さて、そんな中で北朝鮮のある特異な家庭が、現在独裁者として国軍を率いている。
その軍隊には、通常兵力の全面戦争を遂行する力が既に無い(石油を含む物資の不足)が、「噂段階の核」と「弾道ミサイル」「ゲリラ戦専門の特殊部隊」を持つ。
この先進国の時代に、近代国家が共存しているようなものなんだが(中国ですら先進国化の過程にある)、国際的にも重大な不安定要因であるのは間違いない。精神的な葛藤や脅迫(強迫)構造が発生しやすい環境であっても、必ずそうなるものではなくあくまでもそれは「情報伝達や認識における緊張感」のバランスで決まるもので「確立が高い」という話に過ぎない。
しかし、国家自体の構造に権威的反動形成傾向があるなら、その権力者が自分の意志だけで政策決定する事も不可能になる(弱腰と呼ばれたり、2.26のようなクーデターまがいの事件が起きたり、ナチスのような勢力が台頭したりする)。
今の北朝鮮にはこの両者のリスクが共存している、

この問題を合理的な政治的発想で考えても結論は出ないだろう、
損も得も、国益もへったくれも無いのだ(第二次世界対戦下の日本の対米戦もそうなんだし)、
国家の構造自体にリスク要因があるのだから、

心理的な意味でも、現在の朝鮮半島の環境は非常に複雑だ。現在の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が『北寄り対日強行派』を政権の求心力に使ってきたのはご存知のとおりで、反日的な政策を政権の求心力に使うのは中国にも一部共通する部分があるけれど、韓国の場合意味合いが違っている。
これまで韓国の大統領は政権交代後逮捕される流れにあって、何としても政権を与党内で禅譲したい切実な理由がある。韓国は軍事政権からの民主化の歴史が浅く、国の体制自体が先進国化しておらず、財閥の存在もあって政権の維持すら一筋縄ではいかない状況で、そんな政権の事情もあって非常に不安定な共同幻想によって国家が存立している。そこから見ると独裁国家北朝鮮の体制ははるかに安定的であり「対米・対日強行派」であるその存在は同一民族として特別な存在感を示している。
つまり、朝鮮半島にとっての南北統一とは、ドイツにおける東西統一とは意味が“全く違う”。
ある意味『権威性が北にある』状態なので、南北統一は権威と覇権的反動そして経済を兼ね備えてた朝鮮半島国家の膨張的解釈を可能にするもで、現実の経済リスクを度外視する「幻想としてのノスタルジー」に繋がっている。

それは中国にもわかっているので、商業的な意味しか持たないロシアと違って中国としては本気で朝鮮半島の統一は避けたい。
確かに難民の問題もあるが、本音は核武装した朝鮮統一国家の出現が中国の安全保障上の問題である事が大きい。
アメリカの本音は統一では無く、北朝鮮政権の崩壊による事実上の統一で、核の解体駐韓米軍の残留の中での統一になるから中国としてはこの方が受け入れやすい。(当然イラクのような間接統治時の主力が『人民解放軍』となるバーターはアメリカにとっても悪い話ではないから、この取引にアメリカが応じる可能性は高い)
そんな環境の中で北朝鮮はミサイルを発射した、
最も大事な事は、「その時韓国政府は竹島に領海侵犯の調査船を送り込んでいた」
北朝鮮の政権にとって心理的には朝鮮半島の統一は、経済大国韓国の吸収統一であって、北朝鮮訪問(金政権詣で)を政権浮上のイベントと考えている盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の振る舞いは北にとって好都合でもある。
日本の政府首脳が昭和56年の「弾道ミサイルなどの攻撃を受けた場合、発射基地をたたくのは自衛権の範囲との見解」を根拠に1993年のノドンミサイル発射を受けて「防衛庁が北朝鮮の発射基地を攻撃可能か研究した」事を踏まえ“基地攻撃は有りうる(実質的には攻撃にあたる爆撃機が無いため、航続距離の足りない戦闘機による援護の付かない特攻に近い作戦しか不可能)”と言及すると、韓国サイドは「日本が朝鮮半島を先制攻撃するすることは断じて許せない」と言及した。

これはやっかいな問題で、金丸辺りが考えた「韓国の頭越しに北朝鮮と国交回復」というオプションが確かに効果的だったと言わざるを得ない。
ロシア韓国中国の緩衝地帯に日本の同盟国が登場する事はウルトラCだからだ、
しかし、この可能性は「拉致事件」によって到底不可能なオプションになった。現在日米は北朝鮮の現体制崩壊による朝鮮半島統一(平和維持活動は中国・ロシア・米国・日本・韓国の5ヶ国)を考えていて、それもソフトランディングでなければならない。
米国の限定的基地攻撃があるにせよ、バンカーバスターによる爆撃でも完全にミサイル基地を破壊できない実情(基地があまりにも地中深いため)からすると、どれほど効果があるのかわからない。
確かに、日本はバタバタと動かずに適正規模のミサイル防衛でも整備しつつ、拉致問題の解決に集中するのが現実的だろう。ある意味拉致問題の解決と北朝鮮の現体制崩壊はほとんど同一線上にあるのだし、現体制が崩壊すれば親日的な政権の誕生の可能性も否定できないから、前述のオプションも再浮上する、
しかし困ったもので、今のまま韓国の目論見どうりに朝鮮半島統一が行われる事は「朝鮮半島にとって最もリスクが高い」事を意識できない(その部分の認識は無意識化している)韓国政府は今非常に困った立場になっている。
この話をひっくり返す力があるのは、韓国の世論だけだろうが、果たして(日本が帝国主義を自力で解決できなかったように)その可能性は高いとは言えない。

確かな事は、今回のミサイル騒動で『安部政権』は確実になった。
posted by kagewari at 16:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 精神分析時事放談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


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