2005年09月10日

「被(こうむる)」につていの再考

俺は時々無意識的な認知が自意識に現れている証明として「言葉の中に暗韻が踏まれている」と表現する。これは言語学的には「暗喩:メタファー」って事になるんだけれども、なんか感覚的に違うところがある。
メタファーっていうと「確信犯的に隠れているロジックを認識している」的な意味合いになるからだ。音楽のコードじゃないが「暗黙のある意味合いを踏む」的表現で「暗韻が踏まれる」とかの言葉を選んでいる。無意識的認知の表現としては「つい習慣である和音を左手で弾いてしまう」の方が正確だと考えるからだ。
自我を考える中で、近い言語モデルとして「見た目でイメージできるので」音楽がわかりやすい。(詩や俳句の、韻を踏むってのもの同じ意味だし、映画のモンタージュも同じだが、どうしてもその内容を感覚的に伝え難い)


自分の育った環境で、つい左手はある和音を弾き、この左手の動きはもっぱら無意識的である。主旋律は右手のパートになるので自意識的である。
さて、音楽をたいしてご存知でない方でもわかると思うが、左手がブルーノートのコードを延々と弾いている時に、いくら右手で違うジャンルの音楽を表現しようとしても「JAZZ風」になってしまう。
この時、主旋律を弾いている右手は「音楽の雰囲気や作風を左手に支配される」これを脅迫(強迫)と考えるとわかりやすい。

一般にこの左手と右手は同じ作風に調和しているので、混乱も起きないし弾き手も上機嫌に違いない。
この左手の動きが「教育や親子関係による継承」であり、民族や地域で一定のコード進行になる。
これを『共同幻想』という。
幻想という意味は、なにか妙なオカルト話をしようってのじゃなくて「ある調和に過ぎなく、左手のコード進行だけで音楽にはならない」からだ。
なんとなく想像がつくと思うが「慣習や教育・家族関係で継承される曲調が、ある枠から外れない(保守)」のだから、右手の表現も予測の範囲から外れる事は無く、一定の枠に収まる。
これを『普通』と言う。確かに偶然性はあったとしても、その表現の枠は限られたもので、そこには弾き手としての自由があっても、音楽としての自由は無い。ましてやその『曲調』は自意識(右手)に選ばれたのでもない。

しかし、

◆右手に不快感が無い場合、この状態は「支配されている」と認知されない。

ところが、

この左手の和音を矯正されたと感じたり、その習得にまつわる記憶に不快感や、不平等や不正に近い疑念があったりすると(記憶とは連想性なので)、何をするでなしの状態:日常時に(まるでクラブのピアニストが、時間つなぎにポロンポロンとアドリブで弾いている状態)『常に違和感のある和音が聞こえる事になる』。
重要なのは、この和音の流れが、音楽としてどうこうという事に一切意味がないところだ、
この和音を左手が弾き始める時代に「不快な記憶がエピソードとしてくっついている」ので、その当時の和音を鳴らすと追体験で不快ストレスも再現してしまう。

◆どんなに優れたコード進行でも、右手の自意識には不快感がある。
という事で、まさか異様な旋律(自分にはそう聞こえる)は意識的に弾いている感覚の無い左手が原因とは思えない(実際コード進行自体に問題は無い)ので、右手の主旋律(=現実)に問題があると思ってしまう。
※フラッシュバックとは、つい頭の中で繰り返してしまう「不協和音」のようなもの

これが「自己嫌悪」、
この瞬間、話は上と下が逆さまになってしまい、「問題があるワケではないが、不快感の主体である左手は疑われる事無く、もっぱらそれに合わせる右手の世界から不快原因を探してしまう」。
つまり「疑わしいのは現実」になり、「自分乃至自分に関わる人物が怪しい」という結論になる。
注)よく、精神的悩みがあると、左手和音の側に属する「家族」と軋轢を起こすが、この軋轢は「右手旋律(現実の人間関係)として」であって、「家族の左手的関与」は結果的に安全圏にあり、「表面的な軋轢は、左手的関与を抑圧するための自己保存的衝動」と考えるべきで、左手の関与を疑っているのであれば疑念の中心は「何故そうなったのか?」であって、感情的な反発にはならない。


「被(こうむる)」という状態は、この左手に脅かされる右手の構造(脅迫(強迫)構造)を表しているのであって、主体的な決定や判断とは何ら関わりが無い。
※この構造に自意識は全く無関係なワケだ。


といっても、アイデェンティティーとは、この左手のコード進行の事であり、特異な記憶や関連つけられたイメージを持つ個人には日常性に『和音連想の違和感や不快感』が付きまとう事になる。
和音(日常的コミュニケーション)は、通常の人間関係の中で常に奏でられている(クラブのピアニストの例)のだから(実は、主旋律を弾く頻度は僅か)、ボーダーラインとかの症例が発症するのは不思議な事ではない(自分が日常生活で和音を弾く事でダイレクトに不快感が追体験されてしまうので)。この再現性を「投影」という。

◆「その不快感を想起させる和音を弾いたのは、この和音が妥当と判断したから」で、不快感を発生させている主体は『自分自身』である。

不快感の原因は自分だが、この不快に自分は全く関係無いって話。そしてその和音にもとりたてて問題は無い(実は完全にそうとも言い切れないのだが、話が別次元になるので、、)。

精神分析は「どのコード進行でその不快が起きるのか」を考えるもので、元ネタを探る事で「そもそもその不快の事実関係は今考えるとどんなものか?」と考える工程で(子供特有のデフォルメがコンプレックス力動的側面の主力を成すので、大人の視点で見直すだけでもその誇大性は大幅に修正される)、「コード進行の不快感を、まるでコード進行自体に問題があるかのように解決する」という姿勢ではない。
むしろ「コード進行自体には問題が無い」というポジションになる。
ましてや右手の主旋律に問題がある筈無い

※新しいコード進行の可能性や、そもそもコードからモードへとかの進化は右手主旋律サイドのアイデアであって、「間違いの修正ではない」(こっちが別次元の話)。



昔々左利きは、右利きへと矯正されたんだが(俺もその口)、これも象徴的意味では「政治的保守層には本質的に正しい社会的判断だった」のかも知れない。
革新系を『左翼』なんて呼ぶのも、似たようなものか。。


JAZZの世界じゃないが、このコード進行なる左手を完全無視し「右も左も旋律だ」まで極端にフリーを志向すると、音楽としても壊れるので(笑
フリーJAZZが概ね失敗したのもうなずける。
「何かを表現する」事は、「表現されるロジック」があるのだから、「無秩序なロジック」では、文法として壊れている事になってしまうし「無秩序を表現する事は、結果として一律に無秩序であるだけで結果は自由ではない」という論理矛盾になるからだ。
「若者の暴走行為の結果は意外と画一的」とかね、
タグ:メンタル
posted by kagewari at 06:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学テキスト「Why not」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


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